2016年7月28日
関係者各位
自立生活センターSTEPえどがわ
理事長 今村 登
いまアメリカのワシントンDCで行われているNCILカンファレンス(全米自立生活センターの全国集会)に来ています。
相模原の事件はこちらでも大きく取り上げられ、非常に多くの人が関心を持ち、かつ心配して本当にたくさんの方々が声をかけてくださいます。
今日は政府機関の方からも声がかかり、ホワイトハウス横の建物で意見交換の場が設けられ、なんとアメリカ政府からも「このような障害者をターゲットにした犯罪は許してはならない」ということと、「怒りと悲しみは日本の皆さんと共にある」というような趣旨の声明が出されました。
アメリカの人権意識の高さに感心させられますし、国や人種は違っても、障害者を排除することへの怒りや悲しみは共通で、世界中に仲間がこんなにもいるんだということを改めて実感しています。
今回の事件に対し、STEPえどがわも所属するDPI日本会議とJILからも抗議声明が出されましたので、それも掲載します。
大変恐ろしい事件ですが、犯人だけの問題として終わらせず、社会全体の問題でもあるとして、この事件の教訓とすべきものは何かを、みんなで考えていきましょう。
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2016年7月27日
相模原市障害者殺傷事件に対する抗議声明
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
わたしたちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害の種別を越えて障害者が障害のない人と共に生きることができる社会づくりのための運動を行っている団体であり、北海道から沖縄まで91の団体で構成されている障害当事者団体である。
2016年7月26日未明に相模原市の障害者施設で起きた障害者殺傷事件によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
現時点で事件の全容は不明でありその解明は今後を待たなければならないが、報道によると容疑者は深夜に施設に入り、障害者を刃物で次々と襲い、殺傷し、神奈川県警の調べに対し「障害者なんていなくなればいい」という趣旨の供述をしているとも伝えられている。もし、これが事実だとすると、障害者を「あってはならない存在」とする優生思想に基づく行為に他ならず、私たちDPI日本会議はここに強い怒りと深い悲しみを込めて断固として優生思想と闘っていくことを改めて誓う。
近年、閉塞感が強まる中、障害者をはじめとするマイノリティに対するヘイトスピーチやヘイトクライムが引き起こされる社会状況の中で、今回の事件が起きたことを看過してはならない。ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを許さず、それらが引き起こされる社会状況を変革し、誰もが排除したりされたりしないインクルーシブな社会づくりを進めていくことが求められている。
障害者分野では、2014年に障害者権利条約が批准され、今年4月からは障害者差別解消法が施行されるなど、障害者の有無によって分け隔てられることのない共生社会=インクルーシブな社会づくりを目指した取り組みが進められてきた。
私たちは、今回の事件にひるむことなく、障害者の生命と尊厳がまもられ、様々な権利が行使できるように、インクルーシブ社会に向けた活動をより一層強める決意である。
なお、容疑者とされる者の入院歴等が一部マスコミで取り沙汰されているが、事件の全容が解明されていない中で偏見と予断を煽りかねない報道は差し控えられることをあわせて求めるものである。
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2016年7月29日
相模原で起きた障害者殺傷事件に関する抗議声明
全国自立生活センター協議会
代表 平下耕三
私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活する社会の構築を目指し、全国各地に計127カ所のセンターからなる障害当事者団体である。
このたび(2016年7月26日)に発生した相模原殺傷事件に関して多くの障害者の命がうばわれ、たくさんのけが人が発生したことに関して悲しい気持ちでいっぱいである。犠牲になられた方のご冥福をお祈りし、負傷された方々に心よりお見舞い申し上げます。
今回の事件は、容疑者の犯行の動機を含め、事件の全容解明が待たれるところだが、いかなる理由があろうと、「障害があること」を理由に人命が奪われて良い訳はない。容疑者は障害者の存在を否定し抹殺する方が良いというような趣旨の思考の持ち主であったような報道もされているが、もしこれが事実であり、今回の犯行の動機となったということであれば、優生思想そのものであり、強い怒りを覚え、深い悲しみに打ちひしがれる。ここに改めて私たちは優生思想の撲滅に向けて闘うことを誓う。
一方、容疑者の病歴から措置入院のあり方を見直すという報道があるが、これには議論の方向性と報道のあり方によっては、犯罪と障害を安易かつ一律に結び付けるような偏見を助長しかねないことから、丁寧かつ慎重な議論と報道のあり方を求める。もちろん犯罪に対する罰と償いは求められて当然であるが、犯人個人の問題として終わらせることなく、こうした思考、行動を生み出してしまう原因の一つに、社会の側が持つ問題があるかもしれないということにも目を向けるべきと考える。
2014年に日本も批准した国連の障害者権利条約と本年4月から施行された障害者差別解消法は、多様性を認め合い、インクルーシブな社会を目指したものである。私たちは、条約と法律の趣旨が広く浸透し履行されていくことで、今回のような事件がなくなると信じ、今後も障害種別を問わず必要な支援が行き届き、地域での自立生活が確立できるよう活動していくことを誓う。