関口 悟
去る10月5日、有明の東京ビッグサイトで行われた国際福祉機器展をおおよそ三年ぶりに見学してきた。今回はこの話をしたいと思う。
PC・スマホ等で見られるWeb展と、実際に会場に足を運んで見るリアル展の二つに分かれたせいか、コロナ禍前よりも規模が小さくなり、出展者も以前の三分の二(約320社・団体)に減っていた。
そして、以前からの傾向として、展示内容が高齢者向けになってきている。その中で印象に残ったのは、トヨタ自動車が本格的に電動車椅子市場に参入する動きがあることだった。
たった一社、車椅子ゾーンに出展したトヨタブースでは「MOBILITY FOR ALL」と題して、現在開発中の「JUU(ジェイユーユー)」という電動車椅子のデモと二人乗り電気自動車「C+Pod(シーポッド)」車椅子仕様の展示がメインで、福祉車両はハイエース(ハンディキャブ仕様・ワンタッチ車椅子固定装置付き)一台だけだった。
JUUとは「自由」と「JOY」、「UTILITY」などをかけたネーミングで、トヨタとグループ会社が開発したドライブユニット、制御ユニット、そしてオムニホイール(WHILLの前輪にも使われている)、車椅子後部にしっぽのように生えている可動式のフリッパーアームの働きで平坦な道からきつい階段まで登れる仕様になっている。今回はデモ走行しか見られなかったが、来年には試乗できるようになって欲しい。
( 公式YouTube動画: https://youtu.be/dJwT0N8_D0I )
敢えて福祉車両ゾーンではなく、車椅子ゾーンに出展することにトヨタの本気を見た気がしている。
もっとも、そこまでやるつもりなら、タクシー専用車両「JPTAXI(ジャパンタクシー)」の改善が先だろうと正直突っ込みたくなったが。
そして隣接するトヨタグループ会社のJTEKT(ジェイテクト)のブースには、トヨタの「C+Walk(シーウォーク)」(歩行領域電気自動車)のカートタイプ(いわゆるセニアカー)が完成形として置かれていて、希望すれば誰でも試乗できる状態だった。JTEKTブースに常駐しているトヨタ社員さんによれば、来年には発売予定だという。
ぼくも試乗してみた。操作は簡単でスタイルもカッコいい。前面には障害物を検知して自動で停止する仕組みが備わっている。後部にはちょっとした買い物などが載せられるスペースがあった。
黒いオシャレなボディはさすが自動車会社のデザインだと感心したけれど、自宅に置くには大きすぎると感じた。バッテリー容量も満足できるものではなかった。普段乗りには常に交換用バッテリーパックを持ち歩く必要があると感じた。
上に挙げたことだけではなく、いろいろ課題はあるけれど、トヨタの動きをきっかけに、海外メーカーの高機能な機種や、日本の道路交通法や補装具支給制度に縛られて萎縮してしまった日本の電動車椅子が、障害者にとってのラストワンマイルの乗り物として再び活性化することを願っている。
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